無塗装機

昨今の原油高の影響が出たのでしょうか。

原油高は軽量化で乗り切れ 日航が無塗装の貨物機購入共同通信

ちょっと古い記事で申し訳ないのですが、面白いのでご紹介します。航空機の塗装は、機体の腐食防止のために行うという側面もありますが、その最も大きな役割は航空会社のPRだったりします。そもそも、機体の腐食は塗装しなくても防げるんです。つまり、きれいな塗装で航空会社の存在をアピールするのが塗装の最も重要な役割となるわけです。

このPRの側面を特に重視したのが、(ちょっと古いですが)「リゾッチャ」や「ポケモンジェット」などの特別塗装です。どちらも好評で、特にポケモンジェットは子供が乗りたがっちゃって大弱りしたお父さん、お母さんもいらっしゃることでしょう。これらは、機体の塗装がPRに大きく役立った良い例ですね。

しかし、PRに有効な機体の塗装ですが、一方で大きな問題もあります。実は、機体を塗装すると、その分飛行機が重くなっちゃうんですね。ペンキくらいで重くなるのだろうか?と思われるかもしれませんが、何分大きな機体です。使う塗料も半端な量じゃありません。記事にもありますが、機体を完全に塗装すると、だいたい飛行機が150キロくらい重くなるそうです。「小さな子供と夫婦の3人家族」分くらい飛行機が重くなってしまうんですね。

重くなれば当然燃費は悪くなります。昨今の原油高で少しでも燃料消費を抑えたい航空会社としては、たとえ150キロの重量増でも気になるんでしょう。塗装をしないと、1年間で羽田−札幌往復分くらいの燃料が節約できるということで、まあそれなりに効果はあるみたいです。

ということで、原油高騰のため、大きなPR効果のある機体塗装を省いてまで燃料節約をするとは、航空会社も大変ですねぇ。


・・・。


と、普通ならここでコラムは終了するのでしょうが、長文書くのが大好きな僕のエントリはまだまだ終わらない(笑。

はたして、この機体無塗装、本当に理由は原油高騰だけなんでしょうか?

原油が高騰してます。資源はやっぱり大切ですね。JALは塗装を省いて省エネに取り組んでます♪」っていうPRなんじゃないの、これ?

また、無塗装機は今では極めて珍しい存在ですから*1、これはこれで十分PRになるのではないでしょうか?少なくとも、航空マニアは飛びつきますよね。このネタ。だって、僕も見てみたいもん(笑。銀色に輝くジャンボ。皆さんも見てみたくありません?

マニアが飛びつけば、当然マニア向けのマスコミが飛びつくことになります。航空ファンとかあの類の雑誌ですね。また、扱いは小さいとはいえ、こうして一般のマスコミにも取り上げてもらえるわけです。これも結構いいPRになりますよね*2

さらに。貨物専用機を無塗装にしたというのも狡猾。旅客機を無塗装にしてしまうと、乗客が不安を感じる可能性がありますよね。「ペンキ塗らなきゃ錆びちゃうんじゃないの?」とか、さらには「錆びたら落ちちゃうじゃない!!」なんて余計な心配を乗客が持つ可能性は充分にあります。

その点、貨物機なら問題ありません。荷物はどんな飛行機でも文句いいませんからね。荷主もプロフェッショナルですから、無塗装機が安全面で何ら問題が無いことは良く知っています。この試み、貨物専用機だからこそ可能であったといえます。

そういう意味で、このJALの無塗装機、「PR要素の強い塗装を省く」ということをPRに利用するという、逆転の発想であるということが言えるんじゃないでしょうか。PRをやめます、という形のPR。凄い発想。

このように、頭はやわらかく使いたいものですね。

*1:昔は良くあったみたいですけどね。僕も、胴体下部が無塗装の機体を見たことがあるような、無いような・・・。

*2:まあ、マニアが喜んだところでどれくらい売上が良くなるのか微妙な所ではあるんですけどね