【小学校の頃の僕への手紙】
小学校の頃の僕、こんにちは。君が生きている時代は確か、まだ1980年代だったっけ。僕は、この手紙を2004年10月に書いています。
え、「すごい未来の世界から手紙を書いてくれているんだぁ!」って?
確かに、君の時代から見れば今僕が生活している世界って、「未来の世界」だよね。僕にしてみれば、単なるごく普通の、日常的な世界なんだけど。
でもよく考えれば、確かに未来の世界なのかもしれない。僕はこの手紙を、「コンピューター」を使って書いているんだ。もちろん、僕が自分で買った「コンピューター」だよ。確か、君は自分の「コンピューター」を持つのが夢だったよね。自由自在に「コンピューター」を使いたいなぁ、って。でもね、今の世界では、「コンピューター」を自分で持っていることなんてごく当たり前のことなんだよ。信じられないかい?でも、そんな世界はもうすぐ来るんだよ。
あとね。僕は、自分が書いた文章を、「コンピューターネットワーク」を使って、世界中に発信しているんだ。凄いだろう。残念ながら、僕の文章を読んでくれる人は1日50人くらいしか居ないんだけど。
君が思い描いていた未来は、確かに実現しているよ。
え、「何で、突然こんな手紙を書いたの」って?
うん。急に子供の頃を思い出したから。僕(それは君でもあるんだけど)がかつて夢見た「未来」は確かに実現したんだよ。でもね。なんか、君が夢見ていた世界とは少し違うような気がする。
結局、多少技術が進歩したところで人間の生活ってあまり変わらないのかもしれない。いや、人間の適応力は、多少の技術進歩なんて容易に飲み込んで、日常に変えてしまうほど強いものなのかもしれない。
結局、「夢のような世界」なんて存在しないんだよ。かつての「夢の世界」は、実現してしまえば容易に「日常の世界」へと転化していく。
だから、今君が夢見ている「未来の世界」は、僕にとって単なる日常でしかない。
でもね。よく考えてみると、技術や社会システムって、ずいぶん進歩したと思うんだ。もちろん、僕自身も。ちょっと立ち止まって、振り返ってみないと気づかないことだと思うんだけど。
だから、僕は【小学校の頃の僕へ】手紙を書くって言う「作業」を通じて、ちょっと後ろを振り返ってみることにしたんだ。
で、振り返ってみた結論なんだけど。
結局、僕らは前に進むしかないのかなぁ、って思った。君の頃より、僕らの世界は進んでいる。でも、まだまだ不十分だ。もっと前に進んで、君と僕が夢見た「素晴らしい未来の世界」を実現するために努力しなくちゃ。
多分、その「未来の世界」は、蜃気楼でしかないんだろうけど。でも、例えそれがどんなに追い求めても掴む事の出来ない幻であったとしても、目標がないよりあったほうがいいと思わないかい?
まあ、まとまりのない手紙になってしまったけど、そろそろこの辺で筆をおこうと思う。明日も仕事なんでね。つまんない愚痴みたいな手紙を呼んでくれてありがとう。
あ、そうそう。君に謝らなくちゃいけないことがあったんだ。
あのね。僕ね。いろいろがんばったんだけど、女性にちっとももてなかったんだ。君は25歳頃に結婚するって小学校の文集に載せた将来の計画に書いたよね。それ、無理だから。
それどころか、ちょうどその頃、クリスマス・イブの夜に振られるっていう、衝撃的な出来事があるから。
かなりへこむから、覚悟していてね。