割に合わない?

紙幣や貨幣の偽造事件が多発しています。紙幣のほうは、新札への切り替えのごたごたを狙ったものだと思いますが、こちらの事件のほうはちょっと理解に苦しみます。

<偽500円硬貨>偽造貨幣の疑い2万枚 財務省

偽造500円硬貨が大量に発見されたというニュースなのですが、どうなんでしょう?この事件。なんだか、割に合わないような気がします。

僕は硬貨を偽造したことがない(当たり前ですが)ので分からないのですが、硬貨の偽造にはパソコンとスキャナさえあれば何とかなる紙幣の偽造に比べ、難易度が高そうな気がします。

まず、素材の調達。硬貨はニッケル合金ですが、ニッケルなんてどこに売ってるんでしょうか?僕はどこに売っているのか知りません。普通の人は入手経路すら知らないような気がします。また、価格も気になります。さほど高くないと思いますが、紙よりは高いでしょう。

仮に材料は手に入ったとしましょう。しかし、製造も困難であるように思われます。硬貨を作るためには鋳造するか、プレスしなければいけません。鋳造で貨幣を作る場合、ニッケルを溶かさなくてはいけません。ニッケルの融点は分かりませんが、おそらく普通のご家庭ではニッケル合金の鋳造は不可能でしょう。それなりの設備が必要になると思います。一方プレスで製造する場合には、ニッケルを溶かす必要はないものの、今度はニッケル合金の板をを打ち抜くだけの力のあるプレス機を用意しなければなりません。そんなもの、一般のご家庭にはありませんよねぇ。

つまり、貨幣の偽造を行うためには、

(1)入手困難な素材を手に入れ、
(2)特殊な設備を準備し、
(3)鋳造やプレスなどの特殊な技術を持つ

という3つの条件をすべて兼ね備える必要があります。正直、かなり敷居が高そうです。貨幣の鋳造にはかなりの労力とコストがかかることは間違いありません。

一方、貨幣の偽造によって得られる利益はあまり大きくありません。最も額面の高い硬貨が500円ですから、何をどう頑張っても硬貨1つあたり500円の収入しか得ることが出来ないわけです。1万円札の偽造に比べ、得られる利益が小さいような気がするのですが、どうなんでしょう。硬貨を大量に生産すればコストは下げられると思いますが、それにしたって硬貨一枚あたりの利益が小さいことには変わりありません。今回、2万枚の偽造硬貨が発見されていますが、500円が2万枚では1000万円にしかなりません。仮に一枚あたり50円で製造できたとしても、利益は900万円です。2万枚もの偽500円玉を換金する手間を考えると、あまりうまみのない話のように感じてしまいます。

正直、硬貨の偽造はあまり効率の良い犯罪ではないような気がします。利益を求めるのであればもっとましな方法があるはずです。何故、このような非効率な犯罪に手を染めるのか?

「ATMを利用すれば足がつきにくいから」かとも思いましたが、先ほど挙げた硬貨を偽造するための3つの条件をすべて備えてる人はさほど多くないはずです。偽造の実行犯についてはすぐ足がつくと思います。決して、足がつきにくい犯罪ではないはずです。国内で偽造したのであれば。

そう考えると、今回の事件、外国の組織が絡んでいると考えたほうがいいのかもしれません。日本国内で2万枚もの硬貨を製造すればすぐ足がついてしまいます。よほど間抜けな人でない限り、こんな割に合わない犯罪はしないはずです。ただ、外国で鋳造するなら話は別です。少なくとも、足がつくことはないでしょう。

ただ、外国から重量のある硬貨を輸送するにはそれなりのコストがかかります。外国で硬貨を偽造した場合、ただでさえ儲けの少ない硬貨偽造なのに、余分なコストがかかる分ますます儲けが少なくなってしまいます。やっぱりどうやっても割りに合わないですね、硬貨偽造は。正直、合理性がないと思います。



利益追求が犯人の目的ならば、ですが。


犯人の目的が「利益追求」ではなく、例えば「日本経済の混乱」にあるのであれば、今回の事件もある程度理解できます。旧日本軍は中国経済を混乱させるため、大量の偽札を製造しましたが、同様のことが今回も起こっている可能性は否定できません。日本経済の混乱を狙うどこかの外国が、日本に大量の偽造紙幣や硬貨をばら撒いている・・・。そんな陰謀論も出てきているみたいですね。

もっとも、日本のマネーサプライにおける現金通貨の割合はかなり小さいので、多少偽造通貨が出たところで経済には何の影響もないと思いますけどね。まぁ、そんな陰謀論すら頭に浮かぶくらい、今回の硬貨偽造は僕にとって不可解な事件なのです。